労働基準法違反への罰則
労働基準法の罰則について、最も重い物は、第五条の「強制労働の禁止」で、「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」という内容であり、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則となっています。
強制労働として最も簡単にイメージできるのは、かつて存在した「奴隷」であり、この規則は「労働者」出あること以前に、「人間」としての尊厳を守る物であるに他なりません。
近年、この法令違反で使用者が逮捕されたというニュースは聞きませんが、戦前の日本企業が中国人を強制労働させていた事について、その企業が謝罪したという件は記憶に新しいところです。
この罰則が、労基法違反で最も重い罰則となりますが、その他の違反においても最高刑として懲役刑が用意されており、労働基準法違反が決して軽い罪でないことが分かります。
戦前に労働基準法は無かった
戦中の日本においては、戦争遂行のために制定された国家総動員法により、外国人のみならず、労働者の権利は無視されました。
戦後の日本では日本国憲法第十八条により「いかなる奴隷的拘束も受けない」と定められ、それに関連して労働基準法においても規定が定められました。
罰則はほとんど罰金刑である
懲役刑が上限であるとはいえ、労働基準法違反により懲役刑が科せられたという例はほとんどありません。
仮に、「強制労働の禁止」に違反したとされた場合に適用される事はあり得るかもしれませんが、そこまでして働かせることで得られる利益が、使用者にあるかどうかは疑問であると言えます。
しかし、公共職業安定所への求人票と極端に異なる労働条件での就労や、サービス残業の強要などは、一種の強制労働ではないかという議論があり、今後これらが「強制労働の禁止」に抵触するような判例が出るようであれば、重い刑罰の適用に震えなければならない使用者も現れてくるのではないでしょうか。
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